● 短小説「北斗星」 18
現在 1時ちょっと過ぎ 北斗星は「竜飛海底駅」を通過したばかりだった。
(東京までの 残り 約10時間ちょい)
【冒頭にあたり、管理人注記】
この物語は1話完結の様に見えて そうでは無い部分があります。
(たぶん…、きっと… あ・あるハズです。^^;)
なので、途中から読み始めた方は どうか
・第1話『短小説「北斗星」』
・前 回『短小説「北斗星」 17』
上記URLを御参考に、御一読願います。
【今日のウンチク】
『短小説「北斗星」 16』という記事のウンチクの中で使用した…

この図の中で(C)として×印で示された地点は何か? というお問い合わせを二人の方から頂戴していた。
実は 今回の話の中に出てくる地点を判りやすくするためにウンチクで語ろうと思って、図を作成した時に 本当は16話のと今回のとで別個に作っておけば良かったのだが、面倒なので そのままにしてしまったのである。
(手抜きでスイマセン)
さて、この×印の地点(C)は「蟹田町」という場所で ちゃんとJRの駅もある。
で、実は 北斗星はこの駅に停車するのだが、その事は時刻表には記載されていない。
何故ならば、ここでの停車は「業務上」の停車であって、乗客の乗り降りが出来ない停車なのである。
とっとと、結論から言うと 札幌からJR北海道の管轄で走ってきた北斗星は 当然、乗務員もJR北海道の社員である。
で、この蟹田で停車して ここでJR東日本の社員である車掌と交代するのだ。
さらに、もうひとつウンチクを重ねると この後、北斗星は青森駅に向かうが、時刻表を御覧になれば判る通り、蟹田駅と同様、青森駅でも北斗星は停車する記述はされておらず、乗客の乗り降りは出来ない。
現在の車両編成がどうなっているか? 厳密なことを調べていないので もしかしたら、現在は違うかもしれないが、わたしの知る限りの時代で言えば、青森駅でも北斗星は停車し、ここで、函館駅と同じ様に 再び進行方向が逆向きとなるのだが、その際に ここから先頭になる部分に「気動車」と呼ばれる先頭車両が新たに接続され、今までの気動車は切り離されて その場に残される作業が行われ、運転乗務員は この時にJR北海道からJR東日本の社員に「気動車」ごと交代するのである。
ちなみに、この作業は青森駅で行われていると思っている人が多いようだが、実は「青森信号所」と呼ばれる専用の場所で行われており、青森駅とは厳密には違う場所なのである。
ま、こんな話は 知らなくても良いことなのだが もし、鉄道マニアが身近にいる場合はウンチクとして使用されてみるのも一興かと^^;
今までが暗かったぶん、余計に眩く感じる光りだった。
車窓が真っ白に光り、パンドラと若い車掌の後ろ姿を黒く くっきりと浮かび上がらせた。
時間にして ほんの数秒だったと思う。
竜飛海底駅を通過し、窓は また暗くなり、さっきまでの明るさに車内は戻った。
でも、その神々しさに 誰も喋ろうとはしなかった。
「お願い事 できましたか?」
優しい声でパンドラに聞く 若い車掌。
黙ってニコッと微笑み「コクン」と頷くパンドラ。
「そりゃ、良かった。 僕も お願い事が出来ました」
笑顔の車掌… まるで、さわやかカップルだ。
冷静さを取り戻すと同時に さわやかさが完全に失われたのは ジジババ4人組と私だった。
「なんかよ、あったらにうまぐいってまうと はらんべわりじゃ」
なんだか、あの様に巧く事が運んでるのを見てたら 腹が立ってきました
と ジジAがボソッと言った。
「んだ、わも つぶんわりじゃ」
ええ、私も 不愉快ですね
と、ジジB
「までって よんなかえごとだらけでねっぺから」
お待ちなさい 世の中良い事ばかりじゃありませんから
と、醒めた事を言う ババァA
すると、若い車掌の表情がフッと翳り…
「残念だなぁ…」とうつむく車掌
「どうしたの?」と聞くパンドラ
「実は… もうすぐ、青函トンネルを出て 蟹田という駅に停まります。
僕は そこでこの列車を降りて別の車掌と交代し、
蟹田から逆向きに札幌に戻る勤務なんです。」
と、車掌
「え? もう、お別れなんですか?」
と、驚くパンドラ
「ほ~れみれ まなごおっぴらいでみれじゃ
わかれぐだりつたでないの ほれぇ」
ほら御覧なさい、よく、目の玉ひらいて見て御覧なさい
別れ話が始まりましたよ
と、したり顔のババァA
「残念だなぁ… 本当に残念だなぁ…」
ブツブツ言い始める若い車掌
「もう少し、お話ししたいなぁ…」
ちょっとスネた感じで、でも、物凄く可愛い感じのパンドラ
いきなり パンドラの手を両手で握り
「御願いです。 また、僕と会ってくれませんか? 今度は札幌で…」
気迫を込めてパンドラに頼む若い車掌
「あぃぃ、そごで がっぱどくらわせてば うつげがぁ」
そこで、ガバッと抱き締めて×××だ この馬鹿
と、ジジA
「まんず、いだわしぃ」
本当に勿体ない…
と、ジジB
「んだよ、だはんこいでねぇで がっぱだべ」
そうそう、意味もないこと言ってないで ガバッと…
と、ババァB
「いんや、このメンタだら、いってまってるわ」
いえ、この娘 もう、充分にオチてるね
と、冷静に分析するババァA
小さな声で「ハイ」と若い車掌に頷くパンドラ。
「あ~ いっでまった」
あ~、口説かれちゃった…
呟き声がハーモニーを奏でる ジジA、Bプラス ババァB
その時である。
「おい、そこで何やってんだ こら!!」と怒鳴り声
見ると 年配の車掌がロビー・カーの入り口に立ち、若い車掌へ続けて
「もうすぐ交代なんだから 用意せんか」
と、怒ってる。
若い車掌は 慌てて
「すいません、すぐ行きます」
年配の車掌に そう応え パンドラを再び見つめると
「もうすぐ、列車は止まるから そしたら、乗降口のところに立ってて」
と言う。
パンドラが「ウン」と応えると さわやかな笑顔で「じゃ」と言って 年配の車掌の後を追って若い車掌は ロビー・カーから出て行った。
その後ろ姿を目で追っているパンドラに
「いやいやいやいや、さすがアナアナの占ぇだも たいしたもんだな」
「いがったなぁ~ ええオンタだべぇ あのアンチャだら」
と、祝福するババァA、Bと それに はにかんで見せるパンドラ
その光景に どこか釈然としないジジA、B
「わだば、ながこますのにかけたんだでば」
俺は、オマエ(私)が口説き落とす方に賭けたんだ
と、私に向かって不機嫌そうにジジA
「んだよ、わもそんだ たく からぼねやみだでば は」
俺もそうだ、まったく 大ボケ野郎だな、オマエ(私)は
と、苦笑いのジジB
( そんなんで賭けてんじゃねぇよ > 爺ぃ共!! )
って言うか、こんな短時間で口説く方も 口説かれる方も どうかしてんじゃ無ぇの?
やがて、北斗星は青函トンネルを抜け、本州側を走り出したのだが、間もなく列車は減速し始め、ガクンと揺れたのを最後に静かに停車した。
「業務停車です。
ドアは空きますがお客様は乗り降りできませんので
御協力を御願いします」
おそらく年配の車掌であろう声が 低く車内放送で流れ プシュ~ッという圧搾空気の音と共に乗降口のドアが開く音がした。
パンドラは ロビー・カーの乗降口に行って立ち、私とジジババ4人は それを少し離れた後ろで眺めていると ホームを走ってきたのであろう若い車掌が息をきらし、ゼィゼィ言いながらパンドラに歩み寄ると 手帳ほどの大きさの二つに折った紙切れをパンドラに渡すと ニコッと笑い
「じゃぁ、札幌で」と言って 列車から離れた。
パンドラも それに対してわりと大きな声で
「うん、必ず連絡するよぉ」
と応える。
プシュ~ッと空気の抜ける音と共に閉まるドア。
まるで、恋人同士の別離の様なシーンだった。
閉まったドアの窓越しに 手を振り合う若い車掌とパンドラ
ガクンと大きく揺れた後 ゆっくりと動き出す北斗星
何処からか 長渕剛の「乾杯」がBGMで聞こえてくるような…錯覚を覚えた。
「や、まんず 青春だもな」
呟くジジA
「トッチャも あん頃さ、えがめんただったよぉ」
父ちゃんも あの頃は良い男だったよ
と、相槌を打つババァA
「いやぁ、えがったえがったじゃぁ~」
いやぁ、良かったね
「んだ、えがった」
ホント、良かったね
まったりとしている ジジBとババァB
パンドラは 渡された紙切れをギュッと握りしめたまま 遠離っていく蟹田の駅を見つめているのであろう…
なんか、目から ポロッと光モノが落ちたようにも見えた。
そんなジジババ4人と パンドラを見て 私は思った。
なんだ、このベタな世界は… と。 orz
現在 1時半過ぎ(東京までの 残り 約10時間弱)
To be continued …
( というわけで … )


