● 短小説「北斗星」 15
現在 0時ちょい過ぎ、北斗星は函館駅を後にして 青函トンネルへと向かっていた。
(東京までの 残り 約11時間半)
【冒頭にあたり、管理人注記】
この物語は1話完結の様に見えて そうでは無い部分があります。
(たぶん…、きっと… あ・あるハズです。^^;)
なので、途中から読み始めた方は どうか
・第1話『短小説「北斗星」』
・前 回『短小説「北斗星」 14』
上記URLを御参考に、御一読願います。
【今回のウンチク】
前回の14話で「カンカイ」という珍味が物語の中に出てきたが…
これは道産子及び 東北の北部に住む方々には実にポピュラーな珍味なのだが、西日本方面の方々には 全く知らない方が多いものでもある。
なので、今回は「カンカイ」についてウンチクを語る。
「カンカイ」は別名「氷下魚」と書いて「コマイ」と呼ぶ魚でもある。
タラ科の魚で白身である。
モノの本によると…
【標準和名】:コマイ カンカイ、オオマイ(大型魚)、ゴタッペ(幼魚)という呼び名もある… と記述された文献もあるようだが…
この呼び名の由来・用法に関しては 正直、何が正しいのかを正確に言う自信が私には無い。
なので、以下に述べる事は現時点における私の知識という範疇のモノであって、学術的等の検証・裏付けは無い…という事を先に申し上げておきたい。
基本的に… この魚をコマイと呼ぶのは、小ぶりの

上の画のサイズであり、ちょうど、上の画がそうなのだが、これはコマイの頭とハラワタを取った状態で一夜干しにしたもの、これを軽く炙って食べるのが 私としてはコマイの一番美味しい食べ方で その味は、率直に言って「ふぐ」の一夜干しと匹敵する、下手な「ふぐ」を食べるぐらいなら こっちの方が余程の珍味だと思っている。
この魚は 放っておくと、上の画のサイズの2~3倍まで成長するのだが、そこまで成長してしまうと肉質が変化するのか 一夜干しにしてもあまり美味しい魚とは言えなくなってしまうのだが、

上の画のように「一夜干し」ではなく、完全に「干物」にしてしまうと実に美味しい珍味となるわけで 私としては 大きくなったサイズのを干物にした状態のモノを あえて「カンカイ」と呼んでいる。
ちなみに「カンカイ」は 非常に固い。^^;
きちんと干されたカンカイは 鰹節に近い硬さと カンカイならではの鋭利さを兼ね備え、いつか「カンカイで殴り殺された」とか「カンカイを胸に刺されて殺された」と カンカイが凶器となった殺人事件が起きるはずと私は信ずるばかりである。
なので、通の食べ方は 棒状の干物をカナヅチで叩いて身をほぐし、場合によってはペンチでむしりながら食べるのだが、そのままむしったのを食べるのも良いが、マヨネーズに少し醤油と唐辛子を混ぜたものをつけて食べるのが 多くの愛好者の食べ方でもある。
ちなみに、最近は親切に

上の画のように「開いたカンカイ」も売られているが これは、ハッキリ言って邪道。
こんなんでは ウチワの代わりにはなるかもしれないが、風味は違ってしまっているし、凶器には出来ない。(ToT)
カンカイは叩いたり捻ったり、力任せに食べるのが王道で 腹一杯食べて満足するのでは無く、むしり疲れたり、手がいい加減痛くなって根を上げて満足するのが 真の「カンカイ道」なのである。
ちなみに、この「カンカイ」は 本州方面で言う「くさや」とは違った独特の匂いがある。
なので、本州方面の「お高くとまった良いフリこき」な方々には「何、それ?」と匂いで敬遠される事が多いが
「ジンギスカン」 「アイヌネギ」 「カンカイ」
この3つの食べ物の発する匂いは 道産子を泣いて喜ばせる3大匂いとして強調しておく。
なので、もし本州に以西に住むアナタの傍に「隠れ北海道」を探そうと思ったら 上に挙げた3つの食べ物の匂いを嗅がせてみると良い。
真の道産子なら 必ず、「遠くを見つめる視線」になるか「なんでも言う事聞くから、食べさせて…」と懇願するはずだ。
紙コップ(プラスチック製だが^^;)に注がれた酒を 美味そうにパンドラは飲んだ。
「あいや~ 良い飲みっぷりだな ネェチャン~」
4人組のジジババから喝采を浴びている。
パンドラも「美味しいです~」と楽しそう。
ババァの一人が 酒の入った紙コップを私に差し出し
「アンチャも クァッといけ」
と言うが、私は アルコールは嗜まない。
「いや、私は これで充分です」
そう言って、片手に持った缶コーヒーの缶を軽く持ち上げて言うと
「辛気臭ぇアンチャだな~ んだば、良いマグロ捕りになれねぇじゃ~」
( おいババァ、俺はマグロ釣ってナンボの生活じゃ無ぇんだよ )
心の中で そう叫ぶ私。
話を要約すると このジジババ4人組は 互いに2組の兄と妹という兄妹関係にあるのだが、それぞれの兄と妹が互いに結婚し 2組の兄弟夫婦となったのだそうだ。
で、男二人は 下北半島の先端にある大間でマグロ漁をコンビで船に乗って行っているのだそうだが、先日 津軽海峡で漁をしている時に 立て続けに大きめのマグロを2本ヒットして「今年は当たり年だ」と喜んでいたら 漁船のエンジンが壊れ、函館の工場で船を修理することになったらしいのだが… 壊れたのが特殊な部品で、その手配に3週間かかると言われ 修理が終わるまでの間、マグロ2本で儲けた金を元手に道内の温泉地にそれぞれの嫁と共に豪遊して回っていたらしいのだが、どこの温泉に行っても変わり映えしないから
「この際、ハワイでも行くか?」
という話しになり、成田に向かうところなのだそうだ。
まぁ、そんな話は どうでもいい。
問題は 何故、そんなジジババと共に私が そこで酒盛りに参加させられたか…って事だ。(ToT)
実は 私だけ、とっとと その場を立ち去ろうとしたのだ。
でも、その時に ババァの一人が言ったのだ。
「アニ、げっぱのごんぼほりだっきゃ えっとによばれっど」
【筆者注】
この言葉を直訳すると
「オニイチャン、最後まで強情はって単独行動する奴は
真っ先に死神が迎えに来るよ」
というモノなのだが、
これは下北地方の一部に伝わる「ジンクス」みたいなもので、
「一人だけ勝手な事をしてるとロクな目に遭わない」
という意味でもあり、よく例で用いられるのは
「誰かの葬式の時に 一人だけ来なかった奴は
奇妙に、間を置かず そいつが次に死ぬ」
というモノでもある。^^;
これを言われず、その言葉の意味も知らなければ「ふん!!」と その場を立ち去れたのだが、バイリンガル(国内仕様)の私としては 後ろ髪を引かれるどころか、後頭部を鷲掴みにされるぐらいの威力がある呪文となったのだ。
なので、渋々 片隅で缶コーヒーを飲みながら 付き合わされてる私だった。
「でよ、ネッチャ あのアニと どんだなあんべだ?」
ねぇ、彼女? あの彼氏とは どんな交際関係なの?
「嫌だオジサン 私、あの人とは付き合って無いんですよぉ」
笑って応えるパンドラ
( 言葉が通じるのか? > パンドラ )
ババァの一人が振り返り ニタニタ笑いながら私に
「おめも ゆるくないめんこさ てっこさだしてらんだな」
アンタも 大変な女に 手を出したんだな
もう1人のババァは パンドラに
「そった、かちゃましぃこど
えふりごいでくちゃべっでらんだば まいねぇ
かぱぁと まったさがっぱどおっぴらいではぁ どんだ? だ」
そんな訳の判らないことを
カッコつけて喋ってたら駄目ですよ
思いっきり、股を大きく開いて どうぞ、って言わないと
すると、私に話しかけていたババァが
「んだ~、へばさ どんだなほんつけなしでも まいるど」
そうよ、そうすれば どんな馬鹿でもイチコロよ
と言ってババァ二匹が顔を合わせて「グヘヘヘ」と笑ってる。
(ババァ共… いい歳かっ喰らって 訛ってるのを良い事に…
下卑た話してんじゃ無ぇよ!! ) … orz
でも、パンドラは…
「そうですか?…」
とか、言いながら ちょっとソノ気を感じさせている。
そのはにかむ横顔に ちょっとドキッとする私。
それを目敏く見つけたババァAが
「あや? アンチャ おがってまった?」
あれ? オニィチャンも 盛り上がっちゃった?
と、からかうので
「別に…」
と、あえて私は そんな気は無い…という風に するとババァBが
「もじゃっぺねっきゃ この、ほんずなす」
勿体ないこと言ってんじゃ無ぇよ この馬鹿
と 私を しつこく、からかうので(「このクソ・ババァ~」)と心の中で叫んだ私。
その時である。
「あ、ここに居たんですか…」
という声が不意に聞こえたので そちらを見るとキー・ホルダーの話を最初にした 若い方の車掌がロビー・カーに入ってきたとこだった。
その車掌の姿に 鼻白んで 急に静かになるジジババとパンドラ
若い車掌は ジジババには目もくれず、私の方に歩み寄り
「実は… 車掌長がお話ししたい事があると言ってまして…
内容が内容なんで 出来れば車掌室にお越し頂けないかと…」
渡りに船だった。^^
私は「あぁ、いいよ 直ぐ行きます」と快く返辞をすると
「じゃ、皆さん 宴たけなわですが、私は失礼しますよ…」
と、その場を離れる事にした。
そう、先程述べたジンクスでは 第三者に誘われて、そこを離れるなら死神は来ないのである。^^
ジジババ達は ちょっと口惜しそうな顔をしていたが、そのうちの一人の爺ぃが
「おい、車掌 オマエはちょっと待て」と呼び止め
なにやら車掌にカラミそうな気配。
若い車掌がどうなろうと私には知った事では無い。
私は 心の中で手を合わせ、若い車掌など気にせずに、さっさと その場から逃げたのだった…
現在 0時半過ぎ(東京までの 残り 約11時間弱)
To be continued … ( また新たな人物達が … )
