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2006年03月31日

● 短小説「北斗星」 5


20時50分、ほぼ定刻通りに 北斗星4号は登別駅に2分間の停車の後、出発した。(東京までの 残り時間 約15時間)




【冒頭にあたり、管理人注記】


この物語は1話完結の様に見えて そうでは無い部分があります。

(たぶん…、きっと… あ・あるハズです。^^;)


なので、途中から読み始めた方は どうか


   ・『短小説「北斗星」


   ・『短小説「北斗星」 2


   ・『短小説「北斗星」 3


   ・『短小説「北斗星」 4


を、御一読願います。




頼んで届けて貰った甲斐もあってか、「ほっきめし」は美味かった。


一切れ、ほっきの身を口に運んでは シャコシャコと噛み締め、口の中に広がるほっきの旨味を堪能する。


そして、その旨味のピークを ちょっと越えた頃に、ひとつまみの飯を口に放り込み 飯の旨味とで醸し出されるハーモニーを味わう。


それを何回か繰り返した後に 紅生姜や桜漬けを囓って適度にインターバルを取り、また、あらたなアンサンブルが構築するファンタスティックな口の中の空間を… 楽しむはずだった。


人間には 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感があるが、味覚が感じる「素晴らしい世界」の感覚は 視覚が感じる「おぞましい世界」の感覚に簡単に破壊されてしまうのだ。(ToT)


そう、私の目の前では 「パンドラ vs ほっきめし」という壮絶な格闘空間が繰り広げられたのだ。


それは…


かつて、「アントニオ猪木 vs モハメド・アリ」戦で見た、ボクシングでもプロレスでもない異種格闘技の様であり…


多くのバッター達が両足で踏ん張ってもキリキリ舞いさせられた 江夏の豪速球や、星野の気迫のこもった火の玉の様なボールを 一本足でライトスタンドに軽々と打ち返した王の 失礼なまでの豪快さにも似てはいたが…


村山の遅球に豪快に空振り三振しても「オマエがダメなら仕方が無い」と背中で多くのファンを納得させた長嶋の様な説得力は無い。


むしろ、お湯を注いだカップ・ヌードルが 「三分間待つのだぞ」と父に言われ、「判ったよ チャン(父ちゃん)」と応えながら、二分過ぎから食い始める大五郎を見た様な…


ほんの一瞬だったと言っても良い。


「ほっきめし」は まさに箱ごとパンドラに呑み込まれた様な 呆気ない終焉だった。


そこには「味わう」なんて間は瞬間すら無かった。


まさに「かっ喰らう」だけだった。(ToT)


そんな暴虐に蹂躙されて亜空間へと消えていったホッキ達の最後を目の当たりにして 私はホッキ達の無念さに忍び泣きそうになった。


「さぞや、無念だったろうに…」と。


かたや、パンドラはと言えば… 


手鏡をバックから取り出して それを覗き込みながら化粧の崩れ、特に口紅を塗り直し、つまようじで歯に挟まったカスを「シー・ハー」してる。


その姿に 太平洋戦後、占領下における米兵達がジープに乗って 群がる日本の洟垂れガキにチョコやガムをバラ蒔いているのを遠巻きに眺める 戦場で息子に先立たれた父母や、恋人を失った乙女達の複雑な気持ちが判る気さえしたものだった。(ToT)


私は、私のホッキ達を そんな無惨な最後にはしない…


少なくとも 私が、今、手にしている私の「ほっきめし」に横たわるホッキ達だけは 気持ちよく噛み締めて成仏させてやろう… そう心に誓う私だったのだが…


そんな私の想いなんかを吹き飛ばすかの様なタイミングで 列車の通路をカートを押した車内販売のオネェチャンが現れた。


「ビール、コーラ、コーヒーなどのお飲物、

 おつまみ、スナック菓子はいかがですか?~」


その声を聞くや、間髪入れずにパンドラが呼び止めた


「ねぇ、ビール頂戴」


車内販売のオネェチャンは満面に営業スマイルを浮かべ、


「”アサヒのドライ”と”キリンのラガー”がございますが…」


それを聞いて怪訝そうな表情を浮かべるパンドラ


「えぇ? サッポロの黒生は? 百歩譲ってエビスでも良いんだけどぉ…」


「生憎、売り切れてしまいまして…」


それを聞いて大きく「チッ!!」と舌打ちするパンドラ


「札幌っ子のアタシに サッポロ以外を飲めと…

 ま、仕方無いわね きっと、この列車には

 多くの札幌っ子が乗ってるんでしょうから…

 きっと、皆 同じ気持ちなんでしょうね…


 じゃ、”キリンのラガー”を頂戴…



             五本ね




一瞬、動きが止まる車内販売のオネェチャン しかし、彼女もプロである。


「ご・五本…で、ございますか?」


動じないパンドラ。


妖艶な笑みを浮かべながら


「そう、五本よ 咳払いの”ゴホン!!”じゃ無いよ」


                          … orz (いろんな意味で^^;)


私は引きつりながらも プロ意識に徹した笑みを浮かべ続ける 車内販売のオネェチャンに


「あ、あのね? 北斗星の車内でしか売ってない

 キー・ホルダーが欲しいんだけど…」


と、聞くと


「あぁ、申し訳ありません。

 キー・ホルダーは車掌さんの方で扱っているので

 @号車の車掌室に行かれるか、サロン・コーナーの方での販売になります」


そう、私が この「北斗星」に乗った最大の目的は その「キー・ホルダー」の入手なのである、「弁当食べたら、買いに行こうっと…」 私は 再び、通路とは逆の窓の外を向きながら「ほっきめし」を頬張って 弁当を堪能する事に専念しようと思った。


その間に 品物を受け取り、支払いを済ませたパンドラは 1本目をシュパッと開けて、先程の弁当屋のお茶とは比べようも無い程「ンゴ、ンゴ、ンゴ」と 1缶目を一気に飲み干し、「ゲプファ~」と 呼吸なんだか、ゲップなんだか判らない様な声を出して口を拭っている姿が 窓に反射して映って見えた。


そんな時だ、再び、不意に 人を小馬鹿にした様なオルゴール音が響き 間の抜けた車掌のアナウンスが聞こえたのは…


「後5分で 東室蘭に到着です。

 お降りのお客様はお忘れ物の無い様に…

 東室蘭には1分間しか停車しませんのでお早めに御仕度願います」


寂しげな街灯りが 窓の外を流れていく。


過ぎゆく街頭の灯を目で追いながら 口の中に広がる ほっきの旨味を堪能してた私の背後から おそらく2本目の缶ビールも 大半は飲み干した状態のその缶を頬にあてながら、


「やっぱり、苫小牧って スキーより、スケートの街なんですねぇ…」


ポソッと呟いた。


こういう場合に 下手な反応を示すと さっきの様なマシンガン地獄が始まる…


さりげなく聞こえなかったかのフリをして無視してあげるのも大人の対応だとは思ったが、性格上、ついつい


「なんで?」


と、聞いてしまった私。


それに対して パンドラの応えは


「愛する”ほっき”の街…



     アイス・ホッケーの街 なんつって…」




思わず、振り向き様に強烈なデコピンを パンドラの眉間に御見舞して 地球の裏側まで ブッ飛ばしてやりたくなった私だった。(ToT)




現在 21時ちょい過ぎ(東京までの 残り 約14時間ちょい)



      To be continued …  ( きっと続けば 良いなぁ … ^^;)


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

高木美保の事務所がこの記事を見たら
抗議されちゃうかもね、ブタネコさん・・

★ うごるあ さん

むしろ、TV化を望むぐらいの懐の深さと広さを見せてくださると期待しております。^^;

ビールを5本買う豪快なパンドラさんに惚れそうですw

★ うんぼぼ さん

そんな貴方はラストで 大泣きする事でしょう。^^

【※注意!!】

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