● 短小説「北斗星」 3
ほぼ定刻通りの20時20分過ぎ、北斗星は静かに速度を落とし、苫小牧駅に入線した。(東京までの 残り時間 約15時間)
【管理人注記】
前回を読んで下さった方3名から 別々に「パンドラ」をイメージするにあたり、タレントで言えば誰?というお問い合わせがあった。
なので 強いて言えば… と思い当たったのは

「高木美保」って事でひとつ…^^;
(もちろん、本人じゃありません イメージです。^^;)
と言うわけで、どうか脳内変換の御協力を御願い申し上げます。(謝)
また、この物語は1話完結の様に見えて そうでは無い部分があります。
(たぶん…、きっと… あ・あるハズです。^^;)
なので、途中から読み始めた方は どうか
・『短小説「北斗星」』
・『短小説「北斗星」 2』
この二つの記事も御覧下さるとありがたいです。
さて…、
この駅での私の目的とは


「ほっきめし」
この弁当を買う事だった。
(つまんない理由でスイマセン)
「ほっき」と言うのは「北寄貝」と書かれる事が多い様に 主に北海道と本州でも かなり北部でしか獲れない貝で 本州方面でスタンダードな「アオヤギ」を2まわり程大きくした感じで 通常、種類が変わって大ぶりになれば 味も大ぶりになるのが相場だが、私は このホッキの方が アオヤギよりもはるかに美味いと思っている。^^


生の状態だと上の画の感じだが 軽く茹でたり、焼くなど火を通すと

このように鮮やかな色に変わる。
それと、「あおやぎ」で「小柱」と呼ばれる部分も 「ほっき」の方が当然、大きく成人男性の親指ぐらいの大きさがあって、食べ応えがあり 私はこの「ほっき」のヒモと小柱にあたる部分を軽く湯がいたものを ワサビ醤油で食べるのが大好きで、実は 生の刺身も悪くないが ちと生臭い感じが馴染めない人も多いらしく、一般的には 軽く湯がくか炙ると 貝とは思えぬ独特の甘みを伴った味に変わり、そうしたのを刺身にするか、もしくは塩コショウでバター焼きが美味と言われており、どちらも私は大好きだ。
で、苫小牧の隣町である勇払の海岸は「ほっき」の宝庫で 貝も大ぶりで味も良い。
さてさて、夜の8時過ぎ、本当ならホームに弁当屋さんがいるかも判らない、なので出発前に 以前に食べた時のメモに書いておいた弁当屋の電話番号に電話して確認したところ 電話に出た気さくな従業員氏が
「わざわざ、電話くれたんだから よほど食べたいって事っしょ?
いやぁ~ それだら(それなら)弁当屋冥利に尽きるもね~
いいよ、俺が持って アンタが着くのをホームで待ってっから~
したっけ(その代わり)、悪いけど1個だけってのは勘弁して
せめて2個以上の注文にしてね」
そりゃそうだ、駅前の移動費用など 細かい事を考えれば従業員氏の言い分も判る。
聞けば 2個で千数百円だと言うし、なによりも「特別に持って行ってあげる」 私はこの「特別」というのに非常に嬉しくなってしまう性格なのだ。
北斗星は静かにホームに停車した。
停車時間はごく僅かである。
おもむろに財布から札を2枚抜き出し、私は車両の出口からホームに出て 弁当屋の姿を探す。
私の乗った車両は先頭から2両目、ホームを眺め回すと 弁当屋はいた。
後ろから2両目の横に(ToT)
ホームを弁当屋に向かって走る私。
それに気づいて 私の方に向かって走ってくる弁当屋。
知らない人が見たら奇妙なオッサン二人の 妙な感動の瞬間である。
しかし、無情にもホームには発車を告げるベルが鳴り響く。
猛ダッシュの私。
それを怪訝な顔で見つめる駅員。
私は その駅員に
「頼む!! 弁当受け取るまで30秒でいいから」
それを聞いて プッと笑い「わかった」と合図を寄越す駅員。
弁当屋と車両の中間より やや後ろで合流した私は ゼイゼイと息を切らしながら
「無理言ってゴメンネ これ、食べたかったんだ…」
「いやいやいや… なんまら嬉しいもねぇ~ アンタみたいなお客さん
ハイ、じゃ弁当2個 それとこの「お茶」これは気持ちでサービス
それと、電話で言われてた領収書」
私は握りしめた2枚の札を弁当屋に渡し
「釣りはイラナイ、その”気持ち”への 俺の”気持ち”だ」
わざわざ 出張ってくれた上に”お茶”までくれる心意気に 私は胸を打たれたのだ。
心の中で「ほんの数百円で悪いけど 勘弁だ弁当屋」そう詫びた。
もう、既に発車のベルは鳴り終えて 私が乗るのを北斗星は待っている。
遠くで駅員が「お客さ~ん 急いでください」と叫ぶ声が聞こえた。
私は 慌てて弁当とお茶と領収書を受け取り、手近な乗車口から北斗星に駆け込み もう一度弁当屋に
「ワガママ言ってごめんね 今度、またあらためて来るから よろしくね」
そう言った。
すると弁当屋は
「いやぁ お客さん、こんなにチップ貰えるんなら何時でも言ってね」
そう言いながら二枚の札をVサインの様に掲げて見せた。
「あれ?」
弁当屋が持ってるのは1枚は千円札だが、もう一枚は
5000円札だ!!! … orz
気づいた瞬間、無情にも閉まるドア 動き出す北斗星…
分厚いガラス越しに 笑顔で手を振る弁当屋。
引きつった笑顔で手を振り応える私。
でも、心の中で
「4000円 お釣り寄越せ~ さもなきゃ、せめて その千円札だけでも返せ~」
と、泣きながら叫ぶ私。
見る見るうちに 苫小牧の駅は小さく遠離っていくのであった。
(イメージ画像です。^^;)
現在 20時20数分(東京までの 残り 約15時間弱)
To be continued … ( たぶん続く … かもしれない ^^;)


