● 短小説「北斗星」
実験的ショート・ストーリーを書いてみた。
ただし、フィクションでは無く、ノン・フィクションの話しでだ。^^
今から14・5年前の事である。
札幌から東京へと移動する前の日の晩に 悪友達と麻雀をしてボロ負けした。
で、その時に 負けた罰ゲームとして「二代目開業医」と呼ばれる友から
「明日、東京へは 寝台特急「北斗星」に乗って行け」
と、命じられた事がある。
飛行機なら 札幌の自宅から、東京のマンションまでドアtoドアで大凡4時間かからない。
しかし、記憶に間違いが無ければ 当時の北斗星は たしか17時間ぐらいは車内にいる事になり、それだけ時間にゆとりのある時じゃ無ければ なかなか使えない。
で、実は その時に「二代目開業医」は それを単なる罰ゲームとして命じたのでは無く、私を利用して ある物を入手したかったのだ。
それは、当時「北斗星」の車内販売でのみ売っていた特製の皮のキーホルダーで1個1200円だったか、1500円だったか とにかく、普通のお土産屋のキーホルダーが250円とか300円だったのに比べ 凄まじく高価なモノだったのだが、その値段を納得させる程 とても良いデザインだった。
「二代目開業医」は それをローカル番組で見て知ったらしく、「これは使える」と彼なりの判断が下された訳で…
私に1万円札を10枚渡して
「汽車代は その中から経費で差し引いて良いから、
残りの金でキーホルダーを買えるだけ買って
東京から俺の家(二代目の自宅)まで送ってくれ…」
と言う。
真相を明かせば 彼は学会に出席するために 数日後、東京に出かける事になっていたが、その時に買ってくるお土産に悩んでいて調度良いと考えたのだが、本人は いたって寝台車で長時間揺られる事にロマンなど感じない短気者だから 私に身代わりを求めたのだ。
まぁ、そんな事は どうでも良い。^^
私は時間もあったし、「お いいね寝台車」とも思ったし、なによりも運賃を二代目が出すと言う事に とても魅力あるプランでもあったからだ。
さて、そんな訳で 翌日「北斗星」に乗車した私は いつもなら前もってB寝台の個室のチケットを押さえるのだが、急な話だった事もあって 2段寝台が向かい合わせになった席と相成った。
最近乗っていないので 昔は…という言い方をさせて貰うが、車両が始発駅を出る時には座席は折り畳まれて その時の私の場合であれば 見ず知らずの乗客が4人 膝をつき合わせて座り、夜の7時か8時頃になると車掌が回ってきて 畳んであるベッドをセッティングして回るまで 下段のベッドが座席となっていたわけで…
その時は何故か4人掛けの席に 私と おそらく私と同年齢と思しき すこぶる美人と二人だけ、
「おい、JR こんな座席割りで もし間違いが起こったら…
いや、是非 間違いたい…(懇願)」
という オプション料金払っても良いから そういうシチュエーションにしてくれ…という理想の状態だった。
でもね… 人間、いざそういう状態になると これが、実に難しい。^^;
もし、目の前に二人きりで座っているのが 強面(コワモテ)のオニィチャンだったら 何の迷いもなく喧嘩腰で
「オニィチャン 東京まで行くの?」
と 気さくに話しかけられるのだが、すこぶる美人が 物憂げな表情で頬杖つきながら窓の外を眺めていたら どう、話しかけていいか さすがの私も悩む^^;
でも、すこぶるの美人だし これから17時間も一緒なのである。
「仲良くなりてぇ~」
私の 心の中はドロドロと煮えたぎる。
いろんな言葉が 頭の中を過ぎり、それを吟味しては 自分の中でダメ出しをする。
「お嬢さん お一人ですか?」
( 見りゃ判るだろ ボケ!! > 俺 )
「お嬢さん どちらまで?」
(札幌で北斗星に乗る奴は ほとんどが東京まで行くんだ ボケ!! > 俺 )
「今日は なんか揺れますね」
(揺れない寝台車なんか無いべ!! ボケ!! > 俺 )
「やっと二人きりになれましたね」
(「やっと」って何だ? 「やっと」って > 俺 )
「二人が ここで二人だけになった事に運命を感じませんか?」
( 独りでベートーベンでも聴いてろ!! > 俺 )
いろんな言葉が 頭の中を過ぎり、それを吟味しては 自分の中でダメ出しをする。
(ToT)
どう話を切り出したら良いか…
しかし、何も話しも出来ずに終わってしまったら武士の名折れである。
( 武士だったのか? > 俺 )
勇気を振り絞って 遂に言葉を放ってみた。
「ねぇ? 余計な御世話だとは思うけど… 失恋でもした?」
突然、そんな事を言われて 戸惑う女性。
戸惑うのも当然だ あまりの緊張に私の声は2オクターブぐらい上ずり、頭のてっぺんから出た様な声だから。(ToT)
咳払いで誤魔化し、あらためて普段の渋い声で
「あ、御免 なんか物憂げな横顔が ちょっと気になっちゃってさ」
さらに言ってみた。
すると女性は 突然、ニヤッと笑い
「あれ? 口説こうとしてます?
もしかしたら、この女、口説けるかもしれない… そう思いました?」
だと。
呆気にとられる私。
それまでとは うって代わり、陽気にペラペラと喋り出す女。
「出がけに妹に言われたんですよぉ…
お姉ちゃんは… あ、お姉ちゃんって私の事ね^^
お姉ちゃんは黙ってれば そこそこ佳い女なのに喋り出したらオワリだって…
だから、寝台車に乗って もし、男の人と乗り合わせたら
黙って窓の外を眺めて喋ったらダメだよって…
したら、もしかしたら、男の人が口説いてくれるかもしれないからって…
で、さっき… 口説こうとしてました?
やっぱ、妹の言った事 ホントなのかな?…
私、喋ったらダメ?
あれ? もしかして 私、喋り過ぎてます?」
私は呆気にとられてた。^^;
目には見えない気迫に圧倒されていた…
だから、
「いや… 喋り…」
すると女は 私に全部を言わせずに
「ですよね?
あぁ、良かった…
喋り過ぎて嫌われたんじゃないか?…なんて 思っちゃいました。 エヘッ
で、何処まで話しましたっけ?
あれ?
あ、そうそう…
妹はね 私と違って全然 無口な娘なんだけど…
無口って言うよりは あれは無愛想よね
無愛想な女って好きですか?
私は嫌いです。
やっぱ、明るく朗らかが一番ですよね それが幸せってって感じで…
で、つい何日か前に本を読んだんです
イギリスの@人の名前@(外国名で聞き取れなかった)って作家の
@本の名前@(外国名で聞き取れなかった)って本
それって、@人の名前@が書いた20代後半の女性のエッセイなんですけど
とても心理描写が巧みって言うか…
もう、物凄い共感しちゃって…」
北斗星は札幌を出発してまだ30分 千歳の街並みが車窓に広がる中 物憂げに外を見つめる私の顔が反射して映っていた。^^;
女は いつまでも、喋り続けていた。
【管理人注記】 3月27日
この記事を読んで下さった方より、
「時間的な物も含めてリアル感を味わいたいので
現在の北斗星のダイヤに合わせて記述してくれ…」
という御要望が数件寄せられました。^^;
で、調べてみたら 今、札幌-上野間が約16時間に短縮されてたのね^^;
と言うわけで、今なら すっ惚けて書き直すのもアリかと思い、
今回乗車した北斗星は4号で 札幌発19:27分だった…という事に無理矢理しちゃいます。
と言うわけで、どうか脳内変換の御協力を御願い申し上げます。(謝)
現在 20時少し前(東京までの 残り時間 約15時間19分)
To be continued … ( 続く … かもしれない ^^;)


