● 白夜行 第9話
白夜行 第9話を見た。
前回辺りから 亮司がモノローグで語る
「いつ死んでも良いと思った」
という言葉が 私には妙に気にかかる。
何も考えないで見ている人には
「そりゃそうでしょ、亮司は もうすぐ死ぬんだもん」と、
第1話冒頭の このシーンを見てるだけで安易に言うが、悪いが そんな簡単な理由だけで「あ、そうだよね」と納得するほど 私は素直では無い。^^;
先に一つ指摘しておくと 第1話の冒頭のシーンの中に
2005年12月24日…
そして、今回の第8話の冒頭には
2004年 冬…
つまり、腹部を血に染めたサンタ姿の亮司になるまでに あと1年という年月がある…という事を考えると
この第8話では
冒頭、栗原典子を誑かす亮司のシーンから 第8話の終わり
このシーンまでは映像内のストーリーから せいぜい2.3週間程度の期間と思われるので アバウトではあるが1年程度の期間があると考えて大差無い。
なのに、笹垣は もうこの時点で
江利子と…
菊地から それぞれの関わった事件の重要な部分を察知している。
つまり、私が何を言いたいかと言うと 笹垣と篠塚の会話の中に
「桐原亮司は その(父親が雪穂を犯した)償いをした」
「雪穂は たぶん母親に売られた」
「俺には 唐沢雪穂が桐原亮司を守っている様にさえ思えるんです」
と言うような言葉があり、
「普通なら、もう関わりたくない様な男ですよ、
アナタの仰った”共生”する意味が二人には無い」
すると、笹垣は篠塚に「もう一つ、欠けている要素がある」と言う。
一連の犯罪を刑事事件として立件するためには 状況証拠は多いけど、物証が乏しい…という意味なのかな…とも思うけど、そういう意味とは どうも違う様だ。
おそらく これは
「亮司が父親を殺したのを 雪穂が”やったのはアタシだよ”と 罪を引き受けた事」
なんだと 私は思うのだが…
以前、『白夜行 第7話』で述べた
「亭主と愛人(松浦)息子に殺されてもうたら さすがに、そうなるやろなぁ…」
という笹垣の台詞を思い出すと…
そう、この時点で 亮司が父親を殺したと確信している笹垣なのである。
・「雪穂は亮司の父親に犯された」
・「亮司は 自分の父親を殺した」
・「凶器と目されるハサミが 雪穂の家から見つかり、
それを雪穂は自分の母親のだと証言した」
・「雪穂と雪穂の母親は”無理心中”を図り、雪穂だけ生き残った」
こういった事実を整理したら おのずと笹垣には事実が見えていておかしくないと思うのだが…
で、話を元に戻すと ここまでの状況になっているのに、ここからサンタの場面に至るまでに 物語の中の時間で あと1年近く必要なのは何故?って事。
「彼らの思考には特徴があるんです。」
「自分達の真実に触れた人間には死を与えるんです」
笹垣のこの台詞には 「ドキッ」とするものがある反面、「え?」という疑問も湧く
「え?」という部分を先に述べれば 今までに死んだ者は
亮司の父
雪穂の母
西口奈美江
松浦 勇
古賀久志
襲われた者、陰謀に巻き込まれた者を挙げれば
菊地道広
藤村都子
川島江利子
高宮 誠
我々、視聴者は今まで映像を見てきているから 何も疑問を抱かない人の方が圧倒的に多いだろう。
でも、私の様なへそ曲がりは ここで、笹垣の視点で考えた場合、
「亮司と雪穂の真実に触れた為に殺された」
と断定できる殺人は誰の時?を考えてしまう。
で、そこから言える事は 都子や江利子への強姦はハッキリ言えるし、菊地は口封じで巻き込まれ、高宮は財産を奪られたから「なんらかの罠を仕掛けられる」という台詞はアリだと思うけど 奈美江、松浦、古賀は「真実に触れたから」という理由は間違いとは言えないが 正解とも微妙に違うんじゃないか?
そう感じるから「え?」なのであるが、反面 「ドキッ」の部分は そこまでの危険を笹垣は感じているのか…
だから、
「やっと、遊びに来たんか」
留守中、人が入った気配を感じた笹垣が 亮司と雪穂の真実に近づいた自分を殺しに来たのか… って感じの意味なんだろうね。
でもねぇ、笹垣が そこまでの危険を感じていながらサンタまでに あと1年あるのだ。
おそらく、次回の第10話では 下手すると1時間の尺の中に 1年間分の出来事が詰まるのだろう。
そして、10話か11話で 多分、亮司は死ぬのだろう。
第1話のサンタを見れば 誰でもそう思う それなのに 前回の8話から妙に亮司が「何時、死んでも良いと思った」を連発するのは何故なんだろう…
そこが妙に引っ掛かるのだ。
簡単に言えば「決死の覚悟」なんだろうとは思う。
だから、腹を括って
「笹垣殺し」まで意図したのであろう。
森下佳子の脚本を 私が非常に楽しめるのは、些細な感じの台詞でも 一言もおろそかにしない脚本家の気合いを感じる。
例えば
雪穂が養母を殺そうとするのを 不意に現れた亮司が止める。
この時に亮司が言う台詞「二度目は駄目だよ」
「俺がやるから オマエはアリバイを作れ」
そんな感じで 他にも言葉はいろいろとあるのに 何故、わざわざ「二度目は駄目だよ」と亮司に言わせるのか… それは
亮司は実父と 養父的存在の松浦… つまり親を二度殺してる。
しかも、二度目の親殺し(松浦)が結果的に 日陰の道を歩き続ける事になる分岐点だったと言って良い。
せっかく太陽の下に戻った雪穂を日陰に戻さない…という意味を確認させるにも
「二度目は駄目だよ」
という台詞に説得力が備わる。
でね、ここで また私の脳裏を過ぎる台詞が
第5話のラスト 亮司がモノローグで語る
「今ならちゃんと判るんだけどな…」
『白夜行 第5話』
この上の二つの記事を御参照頂いた方なら御存じの通り、私は今でも
「今ならちゃんと判るんだけどな…」
という台詞にこだわっている。^^
で、今回 何気ないシーンで見落とされガチなんだけど 重要なシーンがひとつあった事にお気づきであろうか?
「今、どこにいるの?」
「メモリックスにいるよ」
「本当に平気なの? 何も無いの? 笹垣は?」
後の笹垣と篠塚の会話から 亮司はこの時点で既に「メモリックス」を退社している。
つまり…
雪穂が亮司に「太陽の下に戻してあげる」と言って 渡してくれた高宮から盗んだパスで 亮司はメモリックスに入り、雪穂は 少なからず安心していたはず…
亮司がメモリックスを退社する理由は 笹垣や篠塚に自分の身辺を嗅ぎ回られるのを怖れて…というのも多分にあるとは思うけど なんか、私には それだけじゃ無い様な気がする。
だって、「メモリックスにいるよ」と 雪穂に言うのは明かな嘘なのである。
ここも、一般的に多くの方々は「雪穂に不安を与えないための方便」と解釈するのであろう。
けどね、こういう亮司と雪穂の関係に 事の善悪とは別に”言葉の嘘”は存在しちゃいけないと私は思う。
だから、私にはその嘘に「雪穂に不安を与えないための方便」という様な単純な理由では無く もっと深い亮司が雪穂から遠離ろうとする意思みたいなものを感じるんだなぁ…
だからこそ
「いつ死んでも良いと思った」
という台詞が気になってしまうのは そこに亮司の自殺願望とでも言うのかな…
願望ってのは ちと違うな^^;
自殺覚悟… う~ん、この方が近いけど なんか微妙…
そう、「自殺行為的覚悟の決意」みたいな腹の括り方をした「何か」があるんじゃないか? って思うのだ。
でもねぇ… 今までの亮司の台詞って 奇妙にミスリードっぽい台詞が多いのだ。
「俺、バトラー船長みたいになる」
って言っても 成り切れてなかったし…^^;
でも、
「たとえば、レッドがスカーレットにしたように
逃げ延びるための馬車をあげたい」
というのは もしかしたら今回の
このシーンを指すような気がした。
すると、
「悪趣味なほど大きな宝石をあげたい」
というのは 第1話冒頭の
これか… って アレ?
この指輪、雪穂の左手の薬指なんだな? 今、気付いた^^;
すると、あれ? 亮司と雪穂は結婚するのか?
う~ん、この指輪が どういう経緯で雪穂の左手に誰が嵌めるのか… 実に楽しみだ。^^
さて、私が 西田尚美ファンだからと言う訳では無いが…
思うに、青酸カリを入手するためだけに 栗原典子が存在しているとは私には思い難い。
同時に、どんどんと深入りしてくる篠塚の今後も 非常に気になる。
短絡的に考えれば 篠塚は殺されるか、さもなくば雪穂と結ばれる…という 原作とは違う結末になりそうな予感がする。^^
しかし、あえて私は申し上げておきたいのは 私が「面白かった」とは思った「白夜行」の原作に関して 大いなる不満、消化不良な点は この篠塚一成が 雪穂と亮司の関係を明るみにしてしまうキーパーソンなのに、雪穂のラストが「立ち去ってお終い」である事もあって 篠塚にも「その後」の記述は無い事である。
流れから言えば 雪穂が亮司を失った復讐の対象として篠塚を殺す…か、もしくは篠塚に返り討ちにあって死ぬ…ぐらいのエンディングがあっても良いとすら思う。^^
そうなると原作愛好者の方々からは非難轟々となるのだろうけど そこまでやってくれればTV版「白夜行」は原作を大いに凌駕すると思うんだけどなぁ…^^;
それにしても 八千草薫の
「二人して そのザマか…」
この台詞はお見事でした。
尚、最後に どうでも良いウンチクをひとつ
「なんでもかんでも強姦か」
と、笹垣が呟いた後の…
「弥陀の本願、悪人成仏のためなれば…」
これは 歎異抄の第3章
「本願、悪人成仏のためなれば、
他力をたのみたてまつる悪人、もっとも往生の正因なり」
という言葉と思われ、これは以前に述べた 歎異抄第13章と対になった一文でもある。
で、
この投稿の文章も 似たような意味の文章を「正信偈(しょうしんげ)」か「教行信証」という「歎異抄」と同様 親鸞上人絡みの書物にあった様な気がするんだけど… 思い出せないや^^;
