● 雑感(1月16日)
昔、仕事で国内を飛び回っている頃 盛んに私は新幹線や飛行機を利用していた。
贅沢な話だと言われるかもしれないが、その際 私はグリーン車かスーパーシートしか利用しなかったのだが、それには表向きの理由が二つと 隠された理由がひとつあった。
まず、表向きの部分で言えば
第一に 当時、嫌煙運動が始まり 車内や機内で自由にタバコが吸えなくなり、グリーン車かスーパーシートには 喫煙席があったからだ。
この喫煙・嫌煙については 固有の論議があるので、近いうちに別記事を記す事にして、ここでは言及しない事にする。
第二の理由は 小さい子供連れの家族達のそばの席になりたくない…というものである。
率直に言って 乗り物に乗った子供がハイテンションで騒ぐのは仕方が無いと思っているし、1時間やそこらなら笑って見過ごす事も出来る。
だから、ギャァギャァ騒ぐ子供に対して腹は立たないのだが、私が心底許せなくなるのは 子供がギャァギャァ騒いでるのを まったく知らんぷりでほっとく そのガキの親達なのである。
多少なりとも「すいません御迷惑をおかけして…」みたいな風なら同情もするし、腹も立たず、気にもしない。
しかし、子供そっちのけで高イビキで寝てたり、子供同様にワイワイと連れとお喋りしてたりすると 殺意に近い腹立ちを感じる事があり、なかでも最も腹が立つのは いい加減、自分でも子供が五月蠅いと自覚した その子供の親の取る態度である。
「どうして そんなに五月蠅いの!!」
穏やかに諭すならともかく、そんな感じでヒステリックに叫ぶ女がいる。^^;
騒ぐだけ騒がしておいて トドメにそんなヒステリックな叫びは とても耳障りで、子供の声なんかよりも よほど、気に障る。
まぁ、それでも我が子を自らなんとかしようとするだけマシと言えばマシなのかもしれないと思うのは…、さらに上をいくトンでもない母親に遭遇する事があるからだ。
それは、
「なんで静かに出来ないのよ!!
ほら、あのオジサンに怒られるわよ!!」
私を指さして あたかも責任転嫁しやがるパターンである。
(実際、何度か経験がある)
そうなると、私の頭の中で「ブチッ」と鈍い音がする。
同時に、「やっちゃえ!!」と 心の中の悪魔がGOサインを出す。
だから私は その子供を怒らずに、その親を叱る。
「オマエのその五月蠅い口に 俺の靴下、詰め込むぞ」と。
私は基本的に平和主義者である。(ホントだよ)
なので、新幹線や飛行機に乗る時は「割増料金を払ったつもりで」グリーン車かスーパーシートを利用する。
実際に、「金持ちだから…」と スティタスの様に そういう席を利用している人も少なくないが、当時 私の様な考えで利用していた客というのも実は少なくない。
現実に、グリーン車かスーパーシートの客達は 静かな空間でとっとと寝るか、本や雑誌を読みながら まったりとタバコを吸ってたりしたものだ。
で、隠された理由とは
「ごく希に 有名人、芸能人に会える」
というものである。(実に私らしい^^;)
毎回、誰かが乗っている訳では無い。
誰かが乗っているのを知って乗るわけでも無い。
あくまでも「当たるも八卦、当たらぬも八卦」なのである。
で、その「誰か」が「物凄く嬉しい人」だった時、「割増料金」なんて 全然、気にならなくなるぐらい嬉しいものとなる。
例えば、今でも覚えているのは「山口智子」と 通路を挟んで隣りに座った時。
(もちろん 彼女は窓側で、私と彼女の間には 彼女の付き人らしき人物が座っていたが…)
東京から京都まで 実に素敵な香りに包まれ、タバコを吸う事すら躊躇った。
彼女が京都で下車する際、本当は広島に行くはずだった私だったが、ついつい引き寄せられる様に下車したくなり、グッと堪えてホームを足早に去っていく彼女の後ろ姿を眺めながら 何故か、恋人と離ればなれになるシチュェーションの妄想に取り憑かれ 動き出した車両の窓から流れ去っていくホームの景色を眺めつつ 伊勢正三の「なごり雪」を呟く様に歌い その妄想に酔ったものだ。
(イルカでは無い、あくまで伊勢正三の…である)
「今、春が来て 君は綺麗になった♪」
たとえ、その時がクソ暑い夏の日だったとしても「なごり雪」なのである。^^;
あ、すいません。
ちと話が脱線しました。(新幹線だけに^^;)
近年はシステムが変わってしまったので違うのだが…
当時、東京-羽田間の飛行機に乗る時に 機体が二階席のあるジャンボだと、3000円ほど割増料金を払うとスーパーシートと呼ばれる二階席を利用できたのだが、その際航空会社が運営するラウンジ(全日空なら”ラウンド富士”)で 飲み物飲み放題のサ-ビスを受けられる いわば便利な待合い室を利用できたのだが、このラウンジが 有名人・芸能人と高確率で遭遇できる秘められた穴場だったのだ。
特に千歳空港のラウンジは 行けば誰かいる…ってぐらいの穴場で、大抵は搭乗時刻の1時間ぐらい前に空港に行く私だが、千歳の時だけは2・3時間前でも ウキウキしながら行ったもので いろんな芸能人や有名人を間近に眺めたものだった。
けっして、何かをしよう…なんて気はサラサラ無い。
ただ、ほんの少しの時間 傍で眺める事が出来た… ただ、それだけで充分過ぎるほど満足感に浸る事が出来た。
中には気さくな人もおり、記憶に残っているのは
・スポーツ新聞の競馬欄を一生懸命に見つめている一般客に「旦那さんは 明日のG1何買うの?」と聞いていた桂歌丸氏。
・利用客の空き缶やコーヒーカップを片付けていたラウンジのお姉さんが、トレイを落としてガシャンとたてた轟音に 居眠りから飛び起きたサンコン氏が「おはようバズーカかと思ったよ~」とネタを飛ばしたり…
・木村佳乃にサインを貰おうとしたら 横から「私のはいらないの?」と割り込んできた財前直美…
まぁ、いろんな事があったものだ。^^
さて、前置きはともかく…
今から7・8年前の事。
本当は翌日の飛行機で羽田から札幌へと戻る予定だったのだが、もう既に仕事は片付いていたし、大型の台風が急速に近づいてきているという事もあって 急遽、最終便のチケットを取り その日の夜の飛行機に乗った。
慌てて帰る事にした事もあって その日はラウンジでまったりと出来る時間的余裕も無く、駆け込むように乗った飛行機だったのだが、二階席へと階段で上がってみたら その便はガラガラに空いていたのか 男性らしい客の頭部がひとつだけ後方の席に見えるだけで そいつと私しか二階席の客がいない。
程なく機体が滑走路へとタキシングする揺れが始まり、ガッチリとシートベルトで腰の辺りを固定した私は ただ、窓から外の夜景を見下ろしながらフライトを楽しむ事にした。
その日は 台風の影響もあったのだろう、珍しいぐらい雲一つ無い夜空で 空気も澄んでいるかのように星空も、遥か下に見下ろす地上の景色もクッキリと綺麗に見えていたのだが、それよりも驚いた事は 普段と違って機内の室内灯を消してくれたのである。
「お客様も少のうございますし、せっかくの夜景ですから 見やすいように、この2階席だけ暗くさせて頂きました」
スッチーが機内サービスのコンソメスープを紙コップに注ぎながら ソッと囁いてくれたのだ。
そう、飛行機の窓は気圧への関係もあって二重になっており、夜間の場合 機内灯が点いていると乱反射して外が見づらいのだが、その日の様に消してくれると機内は真っ暗になる代わりに 機外を綺麗に見通す事が出来るのだ。
雲一つ無い晴れた日のナイトフライトは実に楽しい。
国道4号線が 走る車のライトや道路灯に照らされて…
郡山など 大きめの都市部だと住宅街の灯りで…
クッキリと浮かび上がる。
光りの線で描かれた日本地図が眼下に広がる光景は 何とも言えない素晴らしさである。
客が少ないせいか スッチーはこまめに現れて
「スープのおかわりは如何ですか?」
「今度はコーヒーをお持ちしましょうか?」
「毛布の御利用は如何ですか?」
いつものフライトよりサービスも濃厚だった。
そう、いつもなら2階席担当のスッチーが一人だけで全ての客の対応をするのだが、その日は 次から次と違うスッチーが現れて 最終的には普段はもっと早い時間の飛行機しか出ないはずの夕食のサービスまで
「宜しければ如何ですか?」
と出る始末。
飛行機に乗るのは 空いてる便に限るな… そう思ったものだった。
やがて、飛行機は津軽海峡に差し掛かる頃、スッと現れたスッチーが
「今日は イカ釣り漁船の漁り火が綺麗に御覧になれますよ」
と告げ、言われるがまま 窓から外を見下ろすと 津軽海峡のほぼ中央辺りに 北海道と本州をまるで区切る境界線のように 無数の漁船がほぼ一列に並んでイカ釣り用の強力なライトを照らしている。
とても幻想的な景色だった。
それから間もなく、飛行機は無事に千歳に着陸した。
ターミナルビルに接続し、機外に出ようと立ち上がってふと見たら 二階席に座っていたもう1人の客は「高倉健」だった、^^;
どうりでスッチーのサービスが濃厚な筈だった。^^;
普段であればミーハーな私は 気安くサインをねだりに行くのだが、天下の高倉健は身に纏うオーラが違い、「サインを貰おう」なんて考えなど思いもつかないぐらい気高さがある。
その上で、「健さんの傍に座ってスイマセン」というような謙虚な気持ちにさえなる。
その幸運にポーッとしたまま帰宅した私は嫁に
「高倉健さんと同じ飛行機に乗っちゃったよ…」
と告げたのだが、そんな私に嫁はそっけなく
「あら? どうしてウチに連れて来なかったのよ?」
だと。^^;
「天下の高倉健に対して そんな事、言えるかよ」
そう言い返す私に
「言ったら、来たかもしれないじゃない?」
と、表情一つ変えずに言い切り、その上で…
「他人に”天下の”なんて言ってるようじゃ…
アナタは天下を取れないわよ」とも。(ToT)
奥さん…
戦国時代は終わったんです。
(ほんの400年程前に…)


