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2005年09月18日

● 横溝小説の表紙絵


葉月亭』のHAZUKIさんをはじめとする 横溝ファンに捧ぐ…^^




角川文庫の 横溝シリーズの表紙は 現在は 実に味気ない表紙だが、昔の版は 杉本一文氏の表紙絵を使用していた。


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【八墓村】(旧版)


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【悪魔が来たりて笛を吹く】(旧版)


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【女王蜂】(旧版)


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【悪魔の手毬唄】(新版)


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【獄門島】(旧版)


そんな中には 時々、見方を間違えると「エッチな本ですか?」と誤解されかねない様な絵もあり…


そんな中でも代表的なものとしては

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【蝶々殺人事件】(旧版)


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左【真珠郎】(旧版)             右【鬼火】(旧版)  


といった作品があるけど、知らない人が見ると エログロっぽい表紙絵に見えるかも知れないが 小説を読むと、これが実に巧く内容を表しているものであるかが判る。




角川映画で大ブームを起こした時に 有名になったのは

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【犬神家の一族】

この「犬神家の一族の」表紙絵である。


このブームの時に 横溝フェアとして増刷されるにあたり、横溝氏の文庫の装丁が一新されたり、新たに文庫化された小説も増えた。


その一例を挙げると


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【仮面舞踏会】左(旧版)           右(新版)  


この本の場合、旧版である左は 夢に出てきそうな程、不気味な絵である。


でも、横溝ファンの多くは 多分、この旧版の表紙絵を高く評価し、気に入っている人が多いと思う。


それは やはり、先に述べたように 旧版の表紙絵の方が 小説の中味を 実に巧く表しているからだ。


また、上記の「仮面舞踏会」もそうだが、横溝氏は 時々、前に短編として書いた小説や 書いている途中で持病の労咳が悪化し、筆を折った小説を 後年になって大幅に加筆修正を加えて 長編化する…という事を よく行った。


たとえば、


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左【夜歩く】(旧版)           右【迷路荘の惨劇】(旧版)  


この2作が そうで、大幅に加筆修正されて長編化となり 実に秀逸な作品へと変貌した。




そんな多くの表紙絵の中で 最も評価が高かったのが


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【本陣殺人事件】(旧版)


この表紙絵である。


このたび、

葉月亭』さんの

備忘録 57 横溝正史 2:『本陣殺人事件』『黒猫亭事件』『車井戸はなぜ軋る』

という記事の中で HAZUKIさんが


ところでこの表紙の女性、横溝正史並びに杉本画伯ファン諸兄姉のあいだでは鈴子というのが定説のようだが、私はてっきり花嫁の克子だと思っていた。
女性がかぶっている黒猫の顔が角隠しに見えてしょうがないからだ。黒い角隠し。雰囲気出ているではないか。


と述べられてるのに触れて 初めて


「あぁ、たしかに 克子に見る事も出来る…」


と 気がついた。


たしかに、猫の顔の部分が 角隠し… なるほどなぁ^^




いずれにせよ…、最近は 表紙と中味が全然関係無く、表紙は ただ単に綺麗なデザインだったりして、下手すると中味とミスマッチしており、その表紙を作った人は 絶対、その本を読んでいないな…というのが モロバレの物が多い^^


けど、杉本一文氏は 間違いなく その小説を熟読した上で その小説の表紙となるべく絵を描かれており、思うに 相当の横溝ファンであったろうとさえ その表紙絵から感じる事が出来る。


横溝正史氏の文体で用いられる「おどろおどろしい雰囲気」 それが、実に巧く表現された表紙絵だったのだ。


だからこそ、今の角川文庫の表紙絵は 実に嘆かわしいばかりである。




以下、HAZUKIさんの記事への返信です。


私は 初めて 横溝作品に触れて 1頁ずつ読み進めていく時、その文体から だんだん怖くなっていく雰囲気を存分に味わいました。


当時は 今の様に「ホラー」なるジャンルは まだ、明確では無く、海外では「ゾンビ」「エクソシスト」「オーメン」「13日の金曜日」等が現れだしてはいたけれど、国内作品では そういう雰囲気を味わえるものが数少なかっただけに それが とても新鮮でした。


思うに、それは 横溝氏の文章表現力の巧みさによるものであり、文章で描かれた情景描写によって 読者が無意識に脳内イメージを造り上げる事が出来たから… それが大きいのだ…と言う事は その後、いろんな作家の いろんな本を読んでいった中で気づいた事でありました。


で、市川監督による 石坂版金田一シリーズの映画は 実に原作の雰囲気を醸し出す事に成功した映画と言われる所以は 多くの読者がイメージしていた雰囲気を そのまま具現化してくれた事にあるわけだけども ここで、逆説的に理解出来る事は 多くの読者のイメージが バラバラだったのでは無く、ほとんど同じだった事、それは やはり、横溝氏の情景描写の精密さによる一致だった…という事の表れで これは実は凄い事なんですよね…


「読んだ人 それぞれでイメージって違うじゃない?」


って表現が普通の現代にあって そのイメージが ほぼ同じだった…という事なんです。


だからこそ、それほどの筆力を持っておられた横溝正史氏を 私は敬愛してやみません。^^




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コメント

ブタネコさん、横溝展覧会開催嬉しゅうございます…。(笑)
『蝶々殺人事件』の表紙、凄まじいですね。今の風潮ではなかなか発表しにくい絵柄です。(汗)
しかし、20年前にくらべて比較にならんぐらい性表現が過激になってるのに、猟奇的なイラストや言葉に検閲がかかるってのはどういうことなんですかね…。
古いミステリー、サスペンスなどでは「この映画には不適切な表現がございますが、当時の歴史的文化背景を考慮いたしまして…云々」
というテロップがよく流れたりするけども。
少年誌ですらエロ本化している現在、まったく本末転倒なような気がする。
最近の横溝作品の場合も「気違い」のような類の言葉が極力排されて作られてるもんなぁ…。
文学的な言葉の『味わい』に規制をかけて、子供が氾濫する性表現に侵されていくのを傍観するのって、納得できないなぁ。

素敵なギャラリーをありがとうございます!
私は常々ブタネコさんの【横溝正史】は永久保存版ものだと思っておりましたが、そこにこの“表紙絵ギャラリー”が加わったことでますます横溝ファンおよびブタネコさんファンにはたまらない『ブタネコさんの横溝正史』になったと思います。

どの表紙も懐かしく、画像が現れるたび興奮しました。
個人的にも、そうそうこれが横溝作品の表紙絵!と思っただけでなく、これら杉本一文氏の名画を横溝ファンのみなさんとともに楽しめることをとても嬉しく思います。

『八墓村』は秀逸ですね。
『蝶々殺人事件』(旧版)、これにはほんま、度肝抜かれたんを覚えてます。
『悪魔が来たりて笛を吹く』は私が持っているのは新版ですが、やはり旧版のほうがいいですね。
『鬼火』も手元にあるのは『蔵の中・鬼火』と改題された、同じく杉本氏が描かれた新版なのですが、個人的にこちらは「新」のほうが気に入っております(^^ゞ
『夜歩く』『迷路荘の惨劇』も持っているのは新版ですがその他はどれも手元にある“これぞ角川文庫の横溝正史!”といった表紙絵で、なんかこう、胸が熱くなりました。

中でも私が大のお気に入りの、『悪魔の手毬唄』『本陣殺人事件』。
ありがとうございました(泣きそう;;)。
こうしてきれいな画像であらためて眺めてみると、ほんまにいい絵や思います。
当時の時代の雰囲気をまといつつ、今見てもちっとも古くない。そして作品のカバーとして見事に“生きて”いる。
横溝作品の持つおどろおどろしさ、不気味さを上手く伝えているだけでなく、何よりこの二枚には情緒があります。
どちらも“磯川警部もの”だったということも興味深いです。

私は等々力警部も大好きなのですが、彼が受け持つ“都会の事件”の場合はやはり都会ということもあってか、どうもエログロに発展するものが多いので割を食ってるなぁと思います。
(「本陣」表紙絵に対する愚考に対しコメントいただき、重ねてお礼申し上げます。)

そしてそして、『仮面舞踏会』!
もうほんまにありがとうございました(感涙)!よくぞ並べて下さった!
こうして新旧比べてみると、読んでいない人には一見「新」のほうが華やかに映って、中身どんなんかなーと期待を抱かせる効果もあるのかもしれませんが、読了するともう「旧」しか考えられません。
(この『仮面舞踏会』は等々力警部の紳士ぶりが描かれている点でもお気に入りなのです^^)

ブタネコさんは横溝作品をよく理解していらっしゃるだけでなく、今回の「表紙絵」についてや『幻影城』についてなど、横溝氏を取り巻く周辺事情にも大変お詳しいかたでいらっしゃるので横溝ファンの末席を汚している私にとりましてはとても頼もしい、心強い先輩です。

お書きになる文章の行間にも横溝作品への並々ならぬ敬慕の情が感じられ、そうなんですよ、ブタネコさん!と感心・感嘆することしきりです。
市川崑監督による一連の“石坂金田一作品”についても、

>多くの読者のイメージが バラバラだったのでは無く、ほとんど同じだった事、それは やはり、横溝氏の情景描写の精密さによる一致だった…という事の表れで これは実は凄い事なんですよね…

おっしゃるとおりだと思います。活字によって構築された横溝正史の世界を映像で表現することに成功したのが市川崑監督ですが、それ以前に読者のイメージがほぼ統一されていたこと、そのことを市川監督がよく理解していらしたこと、そして出来上がった視覚的イメージ、つまり映画作品がまさにこれこそ“眼で観る横溝正史の世界”だったことに、ファンとしてある意味奇跡的な喜びを感じたものでした。

そこにはブタネコさんが書いておられる「横溝氏の情景描写の精密さ」があったのだということに、あらためて感じ入ったしだいです。

最後になりましたが、トラックバックしていただいたこと、とてもありがたく、嬉しく思いました。
本当にありがとうございました。

★ Jannita さん

『蝶々殺人事件』を買うときは さすが買う本屋を選びましたね^^;

(若い女の子ではなく、オッサンがレジにいる本屋に行きました^^;)

>「気違い」のような類の言葉が極力排されて作られてるもんなぁ…。

筒井康隆が そういった件で 断筆宣言した気も判るし、
それが完全に「ダメ」となったら 戦後最高傑作と言われている
ある横溝作品が発禁になっちゃいますしね^^;


★ HAZUKI  さん

表紙絵 お楽しみ頂けました?^^

やっぱ『仮面舞踏会』は 旧版でしょ?

実は 同じ事を 表紙絵が変わったのを見て感じ、ガックリ
したんです 私も^^;

良くなるんなら許せるんですけどね^^;

獄門島の新盤もあるんですけど 掲載するのを止めたのは
同じ理由でもあり、別の理由もあってです^^;

(たぶん 御想像頂けていると思われますので ボカした
言い方で失礼します^^;)

拙文をお褒め下さった事、ただただ嬉しい限りです。

こちらこそ 本当にありがとうございました。

 
 

ブタネコさん、こんにちは。

2月16日の「市川版:犬神家の一族 再考」を読ませていただき、偶然にも読んだ日の夜にリメーク版の放送がありましたので、見たのですが、それから興味が沸きましたので、ブタネコさんの横溝正史関係のブログを辿らせていただいています。
私は子供の頃から本を読むのはすきなのですが、推理小説や探偵小説にはなじみがありません。
子供の頃に父の兄弟が所有していた江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズが全巻あり、読もうとしたのですが本があまりに古くその匂いと紙の感触が好きになれずにそれがそのままこのジャンルの作品を敬遠してしまう要素になってしまいました。
このジャンルの本を手に取るとそういった匂いや感触を思い出すんですね。
本は結構読んでいて小学生の頃から文庫本に親しんでおりました。
私の子供の頃は、和製SF小説の全盛期で今ではホラーやミステリーに分類されるような作品も数々あってそれらに慣れ親しんでいました。
文庫本を読むのがかっこいいと子供心に思っていて、本屋に行っては端から取り出しては表紙を眺めたものです。
それでやっとここにコメントした理由に繋がるのですが、横溝正史というと、やはり私はここで展示されている表紙の数々を思い出すんですね。
今見ても怖く感じますし、なんだかよくわからないけどどきどきもする。
小学生時分にはそれがとても強烈な恐怖心に結びついてしまい、これもこのジャンルの作品を敬遠してしまう新たな要素にもなったように覚えています。
今本屋で手に出来る横溝正史作品は真っ黒い表紙に薄墨でタイトルに入っている漢字が描かれていて、白い明朝体でタイトルと著者名が入っています。
それで、本屋で手に取ったとき、"こんな表紙だったかなあ"と思って首を傾げたんですが、こちらでこの文章を見つけて納得したのです。表紙が変わってしまったのですねえ。
最近は、若者に本を手にとってもらうために人気漫画家に表紙を書いてもらったりしているそうで、それで本当に本を買っていくのかなあと思ったりします。横道にそれてしまいました。
実は、ブタネコさんの横溝正史作品は文学的だという表現に惹かれて本屋に行ってみまして、とりあえず手にとって読んでみたのです。なるほどなあ・・・と思い、早速1冊購入して現在読んでいるところです。

★ slan さん

当時の角川文庫の表紙絵が怖くて読む気になれなかった…という話は 何人かから聞いた事があります。

まぁ、判らなくもありません。^^;

けどね、中身を読んで味わってから もう一度、表紙絵を眺めると「成程なぁ」と味わい深いものだと理解出来ます。

言い換えれば、表紙絵で食わず嫌いを招くのは商業的には宜しくないと刊行者が考えるのも無理からぬ事とも思う訳ですが、愛好家としては 今の表紙は好きになれず、同様に 現行の角川文庫の横溝作品のラインナップは 横溝を知らぬアホが仕切っているとしか思えませんので、表紙よりもそちらの方が許せません。


【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。