● 「世界の中心で愛をさけぶ」弁護士
冒頭にあたり、この文章を読み進めて頂く際に 出来れば『 世界の中心で愛を… 』カテゴリ-の記事を一通り、御一読頂けるとありがたい。
もし、時間的都合等のある方は せめて昨日の「世界の中心で愛をさけぶ」建築士だけでも、御一読頂けているとありがたい。
(今回は、殆ど その続編なので…^^;)
さて、昨日「一級建築士の資格を持った詐欺師」がTV版「世界の中心で愛をさけぶ」を観ていなかったばかりに「もの凄く気の弱い弁護士」が激怒した事までは述べた。
昨夜、と言うか今朝 午前2時ちょっと前の事、不意に私の携帯が鳴った。
夜中の午前2時に電話とは いささか常識外に思われがちであるが、極々、一般的な世間の人とは 私の生活時間帯は かなり違い、変則的である。
(それが 私がニ-トな親父と呼ばれる所以でもあるが…^^;)
電話をとってみると、相手は「一級建築士の資格を持った詐欺師」だった。
私「もしもし、ブタネコです…」
建築士「オマエよぉ なんて物、見せやがんだ? コノヤロウ…」
呂律が回っていないのか 建築士の喋りが聞き取りにくい。
私「なんだ? 酔っぱらってんのか?」
建築士「酔っぱらってなんかいないよぉ 泣いてんだよ…」
確かに そう言われてみれば 酔ってる声では無く、泣いてる声だ。
私「どうした?」
建築士「昼間、オマエ達(私と弁護士)と別れた後にさ、そんなに言うんだったら「世界の中心で愛をさけぶ」のTV版を観ようと思った訳よ、で、「易者の様な診断しか下さない2代目開業医」に電話して聞いたらDVD-BOX買えっていうからさ 買って帰って それからずっと観てたんだ」
私「良かったろ?」
建築士「良いとか悪いとか そういう問題じゃ無ぇよ、すっかり忘れていた事を全部想い出して グチャグチャだよ コノヤロウ…」
建築士は話せば話すほど泣き濡れていくらしく どんどん話が不明瞭になっていく。
私「オマエには 確かにキツイ話だもんなぁ…」
建築士「キツイなんてレベルじゃ無ぇよぉ… なんなんだよこれ、泣けて泣けて仕方無ぇんだよぉ…」
私「そうだろうなぁ…」
実を言うと その件に関して私には 確かに心当たりがある。
以前、『 世界の中心で愛を… 』カテゴリ-の記事の一連の記事の中で 高校時代に、中学から同じ学校だった ある女の子が白血病で亡くなった話を述べたが、開業医、教授、弁護士、歯科医、そして建築士も 私と同じ様に その女の子と同級生だったのだ。
で、「一級建築士の資格を持った詐欺師」は その亡くなった女の子に片想いをしてたのだ。
実は 私と「アキバ系研究員を束ねた某国立大学理工学部教授」の二人だけは その事を知っており、開業医や弁護士や歯科医は その事を知らない。
我々がTV版「世界の中心で愛をさけぶ」を観て 壊れたのは 皆、等しく その女の子を想い出した事も大きな理由なのである。
皆、その女の子の親父さんの事も覚えており、我々が見舞いに行くと 女の子が喜ぶからと 私達に多額のお金をくれて
「好きな物買うなり、食べるなりしてくれて構わない。 見舞いの往復はタクシ-使って構わない。 必要なら幾らでも用意するから言ってくれ、だから、頼むから頻繁に見舞って 娘を笑わせてやってくれ…」
と、懇願された者達なのだ。
我々は「お金の為にやるんじゃない」と いつも丁重に断ったのだが、親父さんは
「気持ちだから遠慮するな」
と、押しつけ 女の子の病状が悪化するのと比例する様に どんどん必死になっていった。
そんな我々の中で 建築士だけは、いつも病院までは一緒に行くのだが、彼だけは ある時を境に病室に入ろうとせず、
「俺、待合室で待ってるよ」
と言っていた。
ある時、見かねて
「オマエ 少し、水臭いんじゃ無ぇか?」
と 私や教授が言ったら「実は…」と白状した事は…
要するに、中学の時から 建築士は その女の子に片想いしていた事。
見舞いに行く毎に その女の子がやつれていく姿を観ていると 泣きそうになり、それを堪えていた事。
しかし、その我慢も限界で 今度、病室に入ったら 絶対に自分が泣くと自覚している事。
だから、「病室には入りたくない…」と。
実際、そう白状しながら ボロボロ建築士は泣いたのだ。
その話を聞き、泣いている建築士を見て 私と教授は それ以上無理強いを出来なかったのだ。
結局、そう白状した時から その女の子が亡くなるまでの間、建築士は病室に入る事が出来なかった。
女の子が亡くなり、通夜の席で列席者の中で 一番大声を上げて泣いていたのは建築士だったのだ。
だから、ホントは「世界の中心で愛をさけぶ」を 一番、見せてはいけない人物がいるとすれば建築士だったとも言える。
ところがね、開業医や弁護士や歯科医は その事を知らないから、例えば 我々が女の子の「墓参り」の打ち合わせをしても 建築士だけは それに参加しようとはしなかったり、何かの話の中で その女の子の話題になると プィっと席を外したり、無理矢理話題を変えようとする姿に 時には不快に感じていたのだ。
そんな姿を見るにつけ、私や教授は 建築士の心中も判るので どうしたものかと思っていたのだ。
ホントは もっと早く 何年も前に その事を、開業医や弁護士や歯科医に教えておけば良かったのだが、タイミングが無かったし、前にも 述べた様に、私達自身も その女の子の事を忘れて過ごしていた時期が長かった。
それが、今回の「世界の中心で愛をさけぶ」のおかげで 我々の間で 女の子の話が復活し、いつかは建築士の事も…時間の問題だと感じていた。
建築士は10数年前に 縁あって、ある女性と結婚した。
その女性との間に2人の子供(二人とも女の子)がいるが、2番目の子供が産まれる前後から夫婦仲が悪くなり、5年前から別居状態である。
私と教授が勝手に思うには 無くなった女の子への未練を未だに引きずっているから…だと思っている。
だからこそ、今回の騒動の中で 私も教授も 積極的に「セカチュ-を観ろ」と薦めたのだ。
これは ある意味、余計な御世話的行為であり、下手すると 逆効果になる可能性が充分にあると思っている。
ただ、いい加減 私も教授も 建築士の感傷につき合っていられない…というのが本音であり、荒療治もやむなし…だと思ったのだ。
と言うのは、夫婦が喧嘩するのはいいけれど 間に挟まった様になっている二人の娘が不憫だったのだ。
会えば喧嘩ばかりで 関係を修復する話にはならず、だからと言って協議離婚するわけでも無く、宙ぶらりんの状態で娘達は もう中学生なのである。
端で見ていても 絶対に、良い影響にはならない… そう危惧していたのだ。
私「想い出したか?」
建築士「何を?」
私「(亡くなった)女の子の事や 高校時代の俺達の事、その他諸々だよ」
建築士「バカヤロウ、想い出したなんてもんじゃ無いよ…」
私「そうだろうなぁ…、なぁ 悪い事 言わないから、一晩寝て、明日 朝から もう一回、最初から最後まで観なよ」
建築士「観れ無いよ これ以上…」
私「いいから、もう一度観ろよ で、どうせ2・3日 仕事にならないだろうから いい機会だと思って 別居中の奥さんや 特に二人の娘の事を考えろよ」
建築士「うん」
私「な? 今のままじゃ可哀相だから なんとかしてやれよ」
建築士「うん、そうだな…」
私「ツベコベ言ってないで とっとと観ろ!!…と言った訳が判ったか?」
建築士「うん、判ったような気がする」
私「なら、とっとと寝て 起きたらもう一度見直せ」
建築士「判った… ありがとな…」
思わず、私も泣いていた。
一本の傑作ドラマのおかげで もしかしたら、不幸が一つ減るかもしれない… そう思ったら泣けてきた。
40過ぎのオッサンが 屁理屈抜きに純粋だった学生時代に戻るというのは 凄いパワ-なのである。
私は感動していた。
で、その感動を誰かに伝えたい… そう思った。
だから、私にとっては普通の時間であっても 一般的には非常識な時間と知りつつ、まず「もの凄く気の弱い弁護士」に電話して 昼間の彼の激怒を鎮めてやろうと思ったのだ。
弁護士「ほぉい ブタネコかぁ? どうした?」
寝てるかと思ったら ツ-・コ-ルで弁護士は電話に出た。
なんだか、電話の向こうが騒がしい。
私「おぅ 昼間の建築士の件なんだけど…」
弁護士「建築士? 駄目だぁ あのバカだきゃ駄目だぁ… 俺が法律的にビシッと…」
私「いや、だからさ… 今、電話があって…」
私は 一連の話を弁護士に説明した。 すると…
弁護士「そっか… でもなぁ、俺が直接 アイツ(建築士)から詫び貰ったわけじゃないからなぁ…」
弁護士は 珍しく、強気である。
そんな時である 電話の向こうで いろんな声が聞こえて来た。
「先生ぇ ドンぺり来たわよぉ~ ピンクのやつ~ 乾杯しましょ? 乾杯~」
私「おい? オマエ どこにいるんだ?」
弁護士「○×△(ススキノでも屈指の高級クラブと言われている店)で飲んでる」
私「随分、景気が良さそうだな?」
弁護士「それがさ はるかチャンにそっくりな娘がいるのよぉ 純情でさぁ~」
私「高級クラブのホステスつかまえて”純情そうなぁ~”だぁ? バカか? オマエは?」
弁護士「だってさ、スゲェ似てんだよ はるかチャンにさ… この娘、観てたら建築士の野郎 ますます許せ無ぇ… よぉし、ドンペリで乾杯して 気合いを入れて裁判だぁ!!」
建築士は「セカチュ-」観て ズブズブに泣き濡れて反省しているのである。
それを思ったら 無性に腹が立ってきた。
弁護士「(電話の向こうで)おぉい はるかチャン 先生とチュ-しよう? チュ~」
私「オマエみたいな奴は セカチュ-観て車ぶつけてりゃいいんだよ!!」
そう言って 電話を切った。
どうして、私の同級生には まともな奴がいないのだろう?…
