● 温泉に行こうかなぁ・・・
「温泉にでも行こっかなぁ…」 フト、そう思う事がある。
私は 基本的に自宅の書斎に篭もってする仕事が大半のため、運動不足になりがちだし、いくら自分用に機能的にし、お気に入りの場所であったとしても そこに篭もりっぱなしじゃ 気分的に息詰まる。
だから、ゴルフに行ったり、喫茶店に行ったり ちょこちょこと出歩くが、本来は遠出をするのが一番の気分転換になるし、楽しい。
いろんな場所に行って景色を眺めるのもいいが、なによりも温泉につかってまったりと…が 一番良い。
数年前までは、今の日常とは全く逆で 1週間のうち、4・5日は出張と称して日本国内 いろんなところに出かけていた。
考えてみれば 実に極端な生活を過ごしているモンだと 自分でも笑う。
さて、「温泉に行って のんびりするか~」というのは 多くの人が思い実行する事なのだが、何故か日本人の温泉旅行って1泊2日なんだよね?
旅館も「チェック・インは午後3時 チェック・アウトは午前10時となっております」と謳っているところが殆どである。
しかしね、そんなんで まったり出来ますか?
大抵は、5時前後にチェックインして風呂、出てきたら食事、その後、また風呂に入ったり、土産物屋を覗いて寝る。
でも、その温泉に来るまでに片道2・3時間かけて 車や列車で移動して… また、帰りも同様である。
なんか、「まったり」しにくるのでは無く、わざわざ「疲れ」に行ってるようなモンじゃなかろうか?
だから、私はプライベ-トで温泉に行く時は 出来るだけ2泊3日以上の予定で行く。
そうすると 中のまる1日、旅館の部屋でゴロゴロしたり、近所に散歩に行ったり出来、本来の目的である「まったり」が堪能できる。
ところがだ、これ実際に試してみると判る事なんだけど、そういう贅沢には ひとつ問題がある。
同じ旅館に2泊以上連泊するとね 夕食が同じ事が多いんです。
1泊2日の夕食は「お? さすが旅館の食事だ」と お膳の料理が物珍しかったりして楽しめるが、それが二晩 まったく同じお膳が続くと「勘弁して下さい」って気分になる。
チェックイン、チェックアウトも 夕食が同じなのも 旅館の効率を考えれば ある意味、当たり前のシステムではある。
しかし、本来の「まったりする」事を考えると その旅館のシステムは酷く うざったいものだと判る。
気の利いた旅館なら 連泊すると二日目の夕食は違う物を出してくれるところもある。
利に賢い旅館なら 連泊を予約した時点で「オプション料金を頂く事になりますが、二日目の御夕食を別の物に差し替える事も可能です」と二・三千円の料金増しを提案するところもある。
最近は TV番組などで「~温泉に行くなら この旅館」とか「名物女将の~」なんて旅番組が たまにある。
そんな番組を見ていると「お客様が のんびりと普段の疲れが取れますように~」なんて言葉が始終飛び交うが、実際には そういう話では無い。
以前、沖縄に行った時の事。
あるホテルに一週間連泊し、ホテルの従業員に「どこか 食事の美味いとこ教えて」と聞いた いくつかの料理屋を 日毎、順番にまわったのだが… その中の一軒に 非常に面白い店があった。
そこは基本的に 松・竹・梅という3グレ-ドの精進コ-スしか無く、確かに 出てくる料理は そこそこ美味い。
板前が「京都でしばらく修行した…」というのも けっして嘘では無いな そう思った。
しかしね、確かに美味かったけどガッカリした店だった。
というのは「広島産の牡蠣の酢作り」「伊勢直送の伊勢エビの焼き物」「三陸沖近海まぐろの刺身」…って わざわざ沖縄で食べるモンじゃないでしょうよ。
俺は「グルクンの唐揚げ」とか「山羊汁」みたいな「This Is 沖縄!」って料理が食べたかったんだ。
帰りがけ、店の人から「ウチは食材と鮮度にこだわってますから…」と言われたが 私は心の中で「店のある場所にも こだわれ」そう思いながら後にした。
でね、考えてみると これって沖縄に限った事じゃ無いのだ。
最近、どの地方の旅館でも 料理のパタ-ンが画一化しちゃってるんだよね。
「地元~牛のステ-キ」とか「~鍋」みたいな感じなのよ。
秋田に行けば「しょっつる」だ…って言うけど、地元の連中が食べるのとは 微妙に違う。
「なんで?」って聞いたら、「具の好き嫌いがあるし、地元の人が食べるのは クセがあるから…」とか言う。
ようするに 見た目や味付けを「一般的」と称して変えて お客様の為に「食べやすく」しているのだと言う。
と言う事は 極端な表現だが、「シャネル」のバッグを買いに行ったつもりで「シャネリ」を買うみたいな話じゃん…と思う。
ま、たしかに 本物のシャネルを買いたければ直営店に行け…とも言うから、そんな旅館でたべようとする事じたい如何なものか?と言われれば それまでである。
我が家の嫁が 新聞に挟まってくるチラシを眺めながら「あら、”下関直送ふぐフェア”だって行ってみようか」なんて言う。
そう、札幌でも 下関のふぐが食べれるのである。
でも、下関で食べる”下関のふぐ”とは どう頑張っても鮮度や風味は違う。
贅沢な言い分とは思うが、下関に実際に行って食べてこそ”下関のふぐ”なのである。
私は そうこだわる。
だから、基本的に 嫁から そう誘われても「俺、行かない。 行くなら娘と行っといで」そう断ってきた。
私が そういう性格なのを知っているから 最近は私に 一声もかけずに嫁と娘は出かけて行く。
表面上は 幸せな家庭だが、結果的に 私はここ2年「ふぐ」を食べた事が無い。
「松茸」も「伊勢エビ」も「きりたんぽ」も食べた事が無い。
にも関わらず、嫁と娘の何気ない会話を盗み聞きしていると
「あ、軽井沢行く途中で食べた”峠の釜飯” ○×デパ-トの物産展で売ってるみたい」
「え? じゃ行こうか?」
「じゃ 直ぐに支度して…」
なんて言っており、気が付くと いつのまにか二人して出かけている。
当然、いつもの通り 私には一声もかからない…。
そんな時である。
「温泉にでも行こっかなぁ…」
心の底から フト、そう思う。
